全ての格闘家が参考にするべき井上尚弥(2)

キックボクサーがボクサーと戦う場合のセオリーとしてはローキックを使うと言うのが一般的だ。ボクサーは腰から下を攻められた経験がないので、ローキックのディフェンス技術もないし、まず攻撃がよく見えない。しかし話はそう簡単ではなく、ローキックには大きく分けて2種類あり、極真型ローキックはやや前傾姿勢で思いっきり体重を乗せて放つ。これは破壊力抜群で1発KOを狙えるほどの威力があるのだが、致命的なのは逆に顔面へのストレートでカウンターをとられてしまうことだ。過去にどれほどの極真の名選手がキックボクサーにダウンさせられたことだろうか?それに対し、キックボクシング式ローキックは、もともと顔面にパンチが来るのが想定済みなので、やや後傾姿勢になり、顔面に相手のパンチは届かないが、こちらのローキックが届くと言う間合いで、体全体のバネを使って、体重を乗せずに、足のスイングで強烈なダメージを与える。はっきりって一流のキックボクサーにこれをやられたら、ボクサーはなすすべなしである。

しかし、イグナショフがいかに強いといってもK-1では中堅のファイターである。それに対してアーサー・ウィリアムスはタイトルをいくつも持つ、名チャンピオンだ。ひょっとしたら競った試合展開が見られるかもしれないとワクワクした。

アレクセイ・イグナショフvsアーサー・ウィリアムスでも試合開始直後、イグナショフはセオリー通りローキックを放った。アーサー・ウィリアムスは何の抵抗もできずに絵に描いたようなダウンを奪われた。

まぁそうなるわなと思った。そもそもボクシングとキックボクシングは相性が悪すぎるのだ。ジャンケンで言えばグーとパーみたいなものだ。その後もウィリアムスはローキックで倒される。

打撃系格闘技において命となるのはどうやって技の起こりを見極めるかということである。どんな名選手であっても技を放つ一瞬前に微妙な予備動作や癖が出る。それを見極めて技を防御するのだ。

人間は視覚情報を脳で処理して筋肉に指令を送り筋肉が動き出すまでにタイムラグがある。どれくらいのタイムラグがあるかと言うと、例えばこのような実験で測定できる。不意に落とされた定規をどの位置でつかめるかを調べる。定規が落ちるのを目で確認してから、指で定規をつかむので、当然反応には意識がともなっている。他にもわかりやすい例としては、陸上の100メートルでピストルがなってから選手が動き出すまでの時間などでも測定できる。

ヒトが耳でピストルの音を聞いてから、筋肉に命令が伝わり、反応が起こるには0.1秒以内では不可能という結果になった。それを受けてなんとも奇妙な話だがピストルの音から0.1秒以内に反応するとフライングと言うルールができてしまった。ピストルがなっていればどんなに速かろうがフライングでは無いのではないかと私は考えてしまうが、そうすると一か八かのカンでスタートする選手が出てくると思われるので、苦渋の決断と言うことだと思う。

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