全ての格闘家が参考にするべき井上尚弥(3)

実際、2003年にフランスで行われた世界陸上で、当時の男子100mの世界記録保持者であったパウウェル選手が2度目のフライングにより失格になった。パウウェル選手の、このレースの反応時間は0.086秒だった。私はこの判定には若干疑問を感じる。

とにかく人間は視覚情報を脳で処理して筋肉に指令を送り筋肉が動き出すまでに約0.1秒の時間がかかる。パンチのスピードは一般的に時速40kmくらいと言われている。え?そんなに遅いの?150kmぐらいあるんじゃないのと思ってしまうが、野球のピッチャーが時速150kmのボールを投げれるのは円運動だからと言うことであり、円運動の直径が大きくなるほど速くなる。例えばテニスなどになると時速200kmにもなるということだ。

時速40kmを秒速に変換すると約秒速11m。成人男性の腕の長さの平均は73.5㎝。これを間合いと考えるとパンチを出し始めてから到達するまでの時間は約0.07秒。すなわち、どんな超人であってもパンチが出されるのを確認してから避ける事はできないと言うことになる。これは格闘経験者、特にボクサーであるならば痛いほどわかる事実であり、この人間が反応できない0.07秒の攻防の攻防にこそ打撃系格闘技の面白さ味が詰まっていると言える。だから私のような格闘技オタクになると録画しておいて、スロー再生をしてどのようない0.07秒の攻防が行われているのかを楽しんだりしている。

ローキックなどの回し蹴りも似たようなもので、例えば私の空手経験から言うと空手家は薄ぼんやりと対戦相手の全体像を眺める。フルコンタクト空手がその実力を発揮するのは主に接近戦、ステップインしなくても手が当たる距離にあると思う。この距離になると相手の足がほとんど見えなくなってしまうのだ。そこで極真の選手がよく使う技、私が何度もダウンさせられた技が右正拳突きの陰から、右ハイキックを出すと言う技だ。これはほんとに見えなくて、私は一時期ハイキック恐怖症になってしまった。

これをどうやって防ぐかと言えばまず右正拳突きの陰から、右ハイキックが左正拳突きの陰から、左ハイキックが来ると思っている事、そして肩の動きに注目することだ。いかなる名選手であっても、ハイキックを蹴るときはどちらかの肩が下がるものだ。だから肩が下がったら反対側のガードを上げる。肩が下がったら反対側のガードを上げる。とパブロフの犬みたいに練習した。そのおかげで30代中盤にはハイキックで倒される事はほとんどなくなった。

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