極真空手最強伝説は終わったのか(4)〜封じられたブラジリアンキック

まさにハイキックのお手本のような、体の力が抜けたムチのようにしなるキックだった。バカだと言われて構わないが、この試合は涙なしには見れなかった。一歩間違えれば死ぬかもしれない、このK-1のリングという緊急事態において、トーナメントを勝ち上がり、ダメージがたまり、スタミナ切れ寸前の体で、ホーストは無意識だったろう。完全な脱力の中から完璧なハイキックを放った。いったいどれだけの執念を持って、どれだけの修練を積めばこれほどの事が出来るのか?

この時、バンナが用いたガードはグローブを頭につけて、腕と首で破壊力を支えるガードでキックボクシングではよく使われるガードだし、フルコンタクト空手でも試合でよく見るが、(フルコンの場合はちょっと違って相手の蹴りと自分の頭の間に腕を挟んで、ダメージを軽くするイメージ)、フルコンタクト空手ではこれは基本のハイキックのガードではない。フルコンタクト空手の基本のハイキックのガードは右側にハイキックが来たら右腕でガードして(この時、腕は垂直)、さらに左腕は手刀の形で相手の足を受け止める。相手も体勢が崩れているので、両腕をガードに使ってもすぐさま追撃を受ける事はない。

しかし、ホーストのコンビネーションにはそんなガードは間に合わないのだ。結果、不幸な事故が起こった。バンナの腕が強靭な首とホーストの強烈なハイキックに挟まれる形になり、骨が砕けた。これ以前にバンナが決勝のリングに上がったのは7年前だった。強力無比な破壊力を持つバンナだったが、K-1のリングで決勝まで勝ち上がるには圧倒的なスタミナが必要とされる。バンナのようなパワータイプには圧倒的に不利なルールだ。努力に努力を重ねてやっとたどり着いたリングだった。結局、バンナはK-1のリングで一度もチャンピオンになれなかった。

バンナはK-1で私が一番好きな選手だ。(フィリョは別として)彼のジャブはまるでストレート並みの破壊力があった。画面越しでも、背筋が寒くなり、また、猛烈に憧れた。その黄金の左腕が砕かれてしまったのだ。本当に悲しかった。その後の試合もなかなかうまくいかず、腕の痛みで棄権する事もあった。しかし、バンナは見事に復帰する。自転車トレーニングで見事にスリムアップしたハイパーバトルサイボーグとして。

かなり話がそれたがフィリョがK-1で苦しんだ理由の一つがあの強力無比なブラジリアンキックを使えなかった事だ。フルコンタクトの試合でハイキックを出すのはそんなに難しい事ではない。パンチで気をそらして、ハイキックというのがセオリーだが、キックボクシングだと、これに合わせて顔面にストレートのカウンターが飛んでくるから厄介だ。技の組み立てが根本的に違うのだ。

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