総力特集 RIZIN15(30) 〜堀口恭司 vs. ベン・ウィン:あやういレフェリング

  • チャンスを演出したが堀口はこのサークリングを生かすことができなかった。この後逆にピンチを招いてしまう。相手の周りを回るサークリングはあらゆる格闘技でよく使われる技なのだが、私はよく練習していないなら、不用意に使うべきではないと思う。今後堀口がパウンド フォー パウンドを目指すなら、こういう不完全な動きをどうにかしないといけない。削るのか、完成度を高めるのか。グレイシー一族、特にヒクソン・グレイシーがサークリングを全く使わずに、どっしりと構えて相手をよく見て、牽制を出しながら相手の技をうまくキャッチして、タックルからテイクダウンへつなげた様子が脳裏を離れないが、ちょこまか動かないでしっかりと相手を見ることこそが格闘技の基本だと私は思う。

堀口の試合を伝統空手そのものと言う人をたまに見るがわたしは大分違うと思う。やはりKIDから学んだ技術は堀口の中で息づいている。パンチも前傾の物が多い。相手からしてみればただでさえ飛び込み突きがあるのに、これだけ前傾されるとタックルも警戒しないといけない。厄介なことこの上ない。まさに堀口は打撃系総合格闘者として完成の域に達していると思う。那須川天心が今後総合ルールに参戦してくるとしてどんな堀口とは違うアプローチをするか非常に楽しみだ。

堀口ミスブロー。大ピンチだ。やはり回りすぎるとろくなことがない。

ところが驚きのディフェンス。この体勢のまま、高速ステップバック。

上体を起こして

蹴りをがっちりガード。セオリーにない面白いディフェンスで私は狐につままれてしまった。おそらくこういう窮地を想定して、あるいは今までの経験から学んで、このディフェンスを練習したのだと思う。よく守破離と言うが、超一流の選手は皆、離のレベルにいると思う。超一流の想像力を持ち、他の人が想像しない技を生み出していく。

ここから堀口の恐怖のラッシュが始まる。

飛び込み順突き。

胸元に突き刺さる右。これは痛そう。

喉元に左フックが入る。何度か自分ももらった事があるが、ゲホゲホして息が出来なくなる。

ゲホゲホしている所に鬼の右フック。パンチは完璧だが頭に当たる。やはり総合格闘技は実戦に近い。堀口ほどのトップファイターでも、なかなかきれいに当たらない。

ベン・ウィンぶっとばされる。恐ろしい破壊力だ。

立ち上がりばなに右フック。これはそろそろ止めないとやばい。

堀口の連打が的確にベン・ウィンを捉える。

ベン・ウィン、ダウンと思いきや、ダウンを取ってもらえない。これはミスジャッジだと思う。選手にもしもの事があったらどうするつもりだ。私なら、スタンディングダウンを取るか迷った上で、ここでダウンを取ったと思う。確かにダウンをとることでせっかく仕留められる相手に休憩を与える事になるかもしれないが、レフェリーがそれをしないなら、もうこれは格闘技ではなく殺し合いになってしまう。RIZINは盛り上がりばかりを考えるのではなく、選手の安全に十分に配慮して、なるべくレフリー間に差がないように早めのスタンディングダウン、ダウン、TKOのジャッジを心がけてほしい。

もちろん、肉体的なダメージも恐ろしい。しかし同様に、精神的なダメージも心配だ。負けた選手がリングに上がれなくなるような精神的ダメージを受けるレフェリングはしないで欲しい。試合後インタビューでベン・ウィンが堀口との再戦を希望していたので、多少安心したが、自分の経験上心と体に刻まれた傷はそうそう克服出来るものではない。私の見立てでは堀口のラッシュはそれだけの破壊力があった。

歴史に名を残す格闘技選手は皆、人を殺せるレベルの技を身に付けてしまっていた。今回の試合で私は堀口にそれを感じた。マッチメイクが成立すればの話だが堀口は近い将来、総合格闘技の統一世界チャンピオンになると思う。そこから先もあるのではないか?つまり2階級制覇、3階級制覇である。

ようやくTKOを取ってくれた。堀口のラッシュ、詰めの厳しさが圧巻だったが、ベン・ウィンのダメージが心配だ。

レフリーにも問題があるとは思うが、こんなに実力差があるマッチメイクにも問題がある。あまりにも堀口が強すぎて、UFC以外にはもう堀口と対戦できる選手がいないという事情も分かる。ならば、それなりのレフェリングが必要だし、RIZINももう15回を迎えたのだから、このような制度的不備を少しづつ改善すべきである。例えばランキング制度を設けるか、トーナメント式にして1、2回戦ではスタンディングダウン、ダウン、TKOのジャッジを早めにするという安全対策が考えられると思う。これはRIZINを愛するが故の苦言である。

那須川天心や堀口恭司 と言ったスター選手を育ててくれて本当に心からの感謝を述べたい。そして、先代K-1やHERO’Sのように途切れる事なく、これから50年、100年続いて、第3次格闘技ブームを巻き起こし、日本を再び世界から尊敬される格闘技の国にしてほしい。あまりにもあつかましいだろうか?

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