総力特集 RIZIN15(32) 〜朝倉未来と修羅の門の片山右京

私の中で歴史に残る格闘漫画がある。それは修羅の門だ。他流試合は今まで様々な格闘漫画で取り上げられてきた題材ではあったが、修羅の門の凄いところはおそらく柔術か、柳生心眼流鎧組打のような、対刀、対槍、対素手を前提とした、日本に古来からあった戦闘概念で創設された陸奥圓明流という架空の流派で全世界の格闘技と戦うというかつてないスケール感で、まるで未来を予測するような漫画で、主人公の陸奥九十九は那須川天心や堀口恭司とかぶる。那須川天心や堀口恭司が切り開きつつある格闘技の新しい地平線は、かつて陸奥九十九が空想の世界の中で切り開いたものであった。

修羅の門の中に片山右京と言う天才空手家が登場するのだが、片山右京は見切りの天才で相手の攻撃をひらひらとかわし一発も受けずに自分の技を相手に叩き込むと言う空手家であった。当時、フルコンタクト空手の修行を始めた頃だった私は、そんなことができたら苦労はしないよ。所詮漫画だなと思っていた。

ところが世界は広く、私の知識は狭い。その後、私はナジーム・ハメドという規格外のボクサーについて知った。IBF・WBO・WBC世界フェザー級王者。ボクシングのセオリーに無い独創的かつ天才的な動きで相手を翻弄するスタイルで、KO率は80%以上を誇った。比較的リードブローを打たない、腕をだらりと下げガードをしない、飛び上がってパンチを打つという、近代ボクシングの禁忌をあざ笑うかのようなスタイル背骨が直角に曲がるほどのスウェーバック、背面を完全に相手に見せるほどの深いダッキング、それらを瞬時かつ的確に行える反射神経と動体視力を駆使するため、避けることに関しては右に出る者がいない。本当に当たらない、当たらない。相手の攻撃がことごとく空を切る。かといってディフェンス偏重なわけでもなく、スウェーバックしながらカウンターパンチを繰り出したり、バックステップしながらパンチを出す等、通常の選手であれば体重を乗せられず手打ちになってしまうようなパンチを放ち、なおかつそれで相手選手を平気でKOしてしまう。

私の常識は粉々に打ち砕かれた。だからといって私はナジーム・ハメドのボクシングスタイルを決して認めはしない。私にとって武術とは(私にとって、格闘技は武術の1分野である)シンプルにして奥深く、誰もが真面目に取り組めば強くなれる物。ナジーム・ハメドのボクシングスタイルはすごく面白いし、学ぶべきところはあるが、彼のスタイルは天才のみに許されるスタイルであって、誰もが真似できるものではないと思う。

コメント